南関町の地域を守る活動組織、「保全隊」の活動を紹介します
南関町では、農地の保全を基本として、地域の環境や景観、農村文化を守るべく、多くの方が地域で構成された「保全隊」の一員として活動されています。その取り組みについて、ご紹介します。
農地を守ることと、地域を守ることの繋がり
まず、農地を守ることと、地域を守ることがどうつながるのか、という疑問があるかもしれません。一般的に、農地は主に米や野菜など食料の生産を目的として耕作、管理されています。その一方で、管理された農地は、雨による災害の防止や生態系の保全、地域文化の地盤として、多くの恩恵を地域にもたらします。これを、農業・農村の有する多面的機能といいます。以下に、その一例をご紹介します。
・水の流れを安定させ、災害を防ぐ
耕作されている田んぼや畑は、作物を育てるための特性上、水を貯める、土に蓄える力があります。大雨の時には、田んぼや畑が一時的に水を貯め、時間をかけて排水することで、河川や地下水が急激に増水することを防ぎ、河川の氾濫や土砂崩れのリスクを軽減することに繋がります。
・生き物の住処として、生態系を守る
農地の周辺は、人の手が加わることで、季節に応じて水や土地の状態が変わる特殊な環境です。農業によって作られる、人の手と自然が混ざった環境は「二次的自然」と言われ、手付かずの自然以上に、人間の生活に近い身近な生き物の住処となっています。農地として人の手が継続的に入り続けることで、独自の生態系が守られます。
・地域の風景や伝統、文化を残す
農業は、古来より人の生活と密接に結びついています。田畑は周囲の山や水辺と一体となって美しい田園風景を形成するとともに、五穀豊穣の祈願など、地域の伝統行事や祭りの地盤となっています。また、郷土料理など、食文化の一端をも担っています。
保全隊の活動内容のご紹介
ここからは、実際の保全隊の活動内容をご紹介します。
※保全隊ごとに活動の内容が異なりますので、実施していない地域もあります。
※令和6年6月時点までの実績に基づいて作成していますので、制度の変更や活動の見直しに伴い内容が異なる場合があります。
・農地周辺の農道保全、管理
農道は、農業をするうえで必須の設備であるとともに、南関町では生活道路としての側面も持っていることが多くあります。そうした地域の重要なインフラである農道を保全し安全を確保するために、定期的な草刈りや清掃、点検を行っています。また、災害後の倒木撤去などの通行復旧作業のほか、舗装のひび割れや路肩の崩れの補修、砂利道のコンクリート舗装など、農道を守る幅広い活動を行っています。
・用水路、排水路、農業用ため池の保全、管理
農業用の水利施設は、営農に必要なだけでなく、大雨時には治水機能により地域防災の役割も担い、農業者以外にもその恩恵がもたらされています。そうした農業水路やため池についても、定期的に草刈りや泥上げ、破損箇所の修復をしています。また、素掘り水路からU字溝への変更や、安全確保のため水路の蓋設置なども行い、災害などで被災した時には浚渫(しゅんせつ、重機などを使って堆積した泥や土を撤去する作業)も実施します。
・鳥獣による農作物への被害対策
南関町でも、深刻な鳥獣被害、特にイノシシによる被害が発生しています。その対策には、農地に電気柵を設置し、農地に近づかせない、近づけないと覚えさせることが有効です。しかし、電気柵は農地を囲うケーブルに電流を流すことで有害鳥獣を撃退するため、適切に設置、管理されていないと本来の効果を発揮しにくくなります。そのため、電気柵の設置、管理や漏電防止のための下草刈りを実施し、被害予防を行っています。
・耕作放棄地の発生防止
農地は、一度荒れてしまうと、再び耕作できるよう整備するために多大な労力がかかります。例えば、雑草によって土の栄養が減ったり、木が生えれば根の撤去が必要になります。また、藪になった農地は、病害虫の発生源になったり、イノシシなどの隠れ場所になるほか、ゴミの不法投棄を誘発します。そうなってしまうと、地域の環境にも悪影響を及ぼすだけでなく、新たに地域で農業をする「担い手」が見つかっても耕作ができず、耕作放棄地の発生に繋がります。こうした事態が発生しないよう、保全隊では遊休農地の草刈りなどを行い、農地を適切な状態に保つための活動を協力して行っています。
・花壇や花畑の作成、管理
地域の景観をよくするとともに、保全隊の活動を広く伝えるため、休耕地などの土地を利用し、季節や土地にあった花を植え、育てています。
・ジャンボタニシ(正式名称:スクミリンゴガイ)の駆除
農地や水路には、様々な生物が生息し、生態系を形成しています。しかし、外来種であるジャンボタニシに関しては、育つ前の細い稲を食べることから、南関町でも米作りにおいて多大な悪影響を及ぼしています。そのため、保全隊では罠や駆除剤を使った駆除活動を毎年実施しています。また、実際に水田に発生しているジャンボタニシの生態観察を行い、適切な付き合い方を探る取り組みも行いました。
・農業に関する地域行事の実施
南関町では、各地域で五穀豊穣を願う「どんどや」(櫓を組み、正月飾りなどを焚き上げる行事。一般的にはどんど焼きともいう。)が行われており、地域の人たちが集まる場となっています。人口減少、高齢化による人手不足で開催する地域が減っている現状もありますが、保全隊では、こうした活動に伴う作業も農村文化の伝承、地域コミュニティの強化の一環として取り組んでおり、地域としての生活の維持、継承を行っています。
保全隊への参加について
保全隊の活動に関心がある、地域の活動に参加したい、といった希望をお持ちの場合は、まずは南関町役場経済課へご相談ください。内容を確認させていただいたうえで各地域の保全隊へ取次ぎをします。
なお、保全隊への参加は、農地を持っているかどうか、南関町在住かどうかは基本的に問いません。実家がある、勤め先がある、以前住んでいたなどのご縁でも参加いただけます。ぜひ、ご検討ください。
※保全隊の活動については、規約にもとづいて作業日当が支払われています。
保全隊の活動資金について
保全隊の活動資金には、国が実施する多面的機能支払交付金を活用しており、作業の日当や資材費、工事費などに充てています。